平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題2は【初級の学習項目に現れるモダリティ形式】でした。 
平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題2は【主題を表す形式】です。 

問題2は難しかった。

問1 日本語は主題優勢型言語と言われており、格成分や名詞句に含まれる要素以外のものでも主題になります。その例を選ぶ問題です。

主題その文が何について述べるものか、その範囲を定めるもので、主語や主格とは別の概念。

これが本問での主題の内容です。

日本語教育事典 (1982年)
 
の172頁によると、
『主題』という術語を用いていても、学者により、その内容はそれぞれ異なっている。
ということですから、
本問の一文目に示された主題の定義に従って、慎重に検討しなければなりません。
念のため、その他の用語も調べておきます。

主語とは、文の成分の一つ。文の中で、「何がどうする」「何がどんなだ」「何が何だ」における「何が」を示す文節をいう。(スーパー大辞林3.0)
主格とは、文や句の中で主語を表す格。(スーパー大辞林3.0)

とは、名詞・代名詞などが、文中で他の語に対してもつ関係。日本語では、「が・の・に・を」などの格助詞が格の関係を示す。(スーパー大辞林3.0)
名詞句とは、文の一部を構成する一連の語で、全体として一つの名詞と同じはたらきをするもの。(スーパー大辞林3.0)

以上の知識を踏まえて、各選択肢を検討します。

1の文は、母について述べているので、主題は「母」です。「母」は名詞そのものなので「名詞句に含まれる要素」という理解で良いのでしょうか。

2の文は、スマートフォンについて述べているので、主題は「スマートフォン」です。同じく「名詞句に含まれる要素」という理解で良いのでしょうか。

3の文は、あの笑顔について述べているので、主題は「あの笑顔」です。連体詞+名詞です。これも「名詞句に含まれる要素」という理解で良いのでしょうか。

4の文は主題は、自信がなかったので、日本語教育事典 (1982年) で調べました。
以下、引用します(172頁)。

「主題となっているものが文脈上明らかで、その主題を示すものが叙述部に示されている場合には、主題が言語の表面には示されないのが普通であり、また話の場の状況そのものが主題(それについて述べられるべき対象)である場合にも、それは言語の表面には表されない。このように言語の表面に現れないのが普通である主題を陰題と呼び、前者を転移陰題、後者を状況陰題と呼ぶのが適当であろう。」

この説明が、本問のいう「主題」にも当てはまるのかは分かりません。
なぜなら、
『主題』という術語を用いていても、学者により、その内容はそれぞれ異なっている。
からです。

しかし、仮に当てはまるとして考えれば、
4の主題は「明日の会議」ではなく、「報告しておくこと」なのではないかと判断しました。
選択肢4の叙述部「私が報告しておきます」において、「報告しておくこと」という「主題」が示されているので、言語の表面には表されなかった(転移陰題といえるのでないかと。
とすれば、選択肢4の主題は、格成分や名詞句に含まれる要素以外のものといえるので、4が正解であると思料します。
ですが、この問題は自信がありません。実際の答案は、3を選びました。
選択肢3の主題を、「何かいいことがあった」と判断し、「格成分や名詞句に含まれる要素」といえるのかはよくわからないけれど、他の選択肢の主題が「格成分や名詞句に含まれる要素」といえると思ったので、消去法で選びました。選択肢4の主題は、「明日の会議」と判断し、「名詞句」であると考えました。
ですが、解説を書くにあたって本を調べ、再検討したところ、以上のとおり4ではないかと思い直しました。

追記)2016年10月27日08:41
自分の考えは間違っていたのではないかと思いました。
この問題、実はとてもシンプルだったのかなと。
問題文下線部Aの直後に
「主題を表す代表的な形式は『は』」
とあり、選択肢すべてに「は」がありますし、どれも主題っぽいです。
1,「母」
2,「スマートフォン」
3,「あの笑顔」
4,「課長に」
1と2は、名詞なので「名詞句に含まれる要素」といえるのではないでしょうか。
「格成分」という言葉がいまいちぴんとこないのですが、「ガ」とか「ヲ」とか「ニ」とか、そういうものを指すという理解で良いのですよね?
であれば、選択肢4の「に」は格成分ですから、「格成分や名詞句に含まれる要素」といえるのでないでしょうか。
私がよくわからないのは選択肢3です。
「あの笑顔」には連体詞がついていることが他の選択肢との違いです。これが
「格成分や名詞句に含まれる要素以外のもの」といえるのでしょうか。
よく分かりません。
しかしながら、1,2,4が
「格成分や名詞句に含まれる要素」が主題になっているので、正解は3なのでしょうね。

今週日曜に大原さんで行われる平成28年度日本語教育能力検定試験問題解説会のようなものに参加して、質問したいのですが、関西ではやるところはないのでしょうか(泣)

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