平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題4は【直示(deixis)】です。

ダイクシスは何度か試験に出ていますが、今回は違う名称「直示」を使ってきました。このように本試験では、同じ意味の用語を異なる名称で出してくることがありますので要注意です。

問1
直示(ダイクシス)とは、発話された場面によって意味が決まるものです。
1,「翌週」という言葉は、発話された場面で使うことができません。過去や未来に視点を置いたときにつかう言葉です。
例…翌週は会社を休むよ。☓
  来週は会社を休むよ。○

2,「あした」は、発話された場面によって意味が決まります。10月14日に発話されれば10月15日のことです。

3、「2013年」は、いつ発話されても2013年なので、直示ではありません。

4,「6分間」は、いつ発話されても6分間なので直示ではありません。

よって、正解は2です。


問2 談話における表現や内容を指す「談話の直示」の例を選ぶ問題です。
1,「それ」が、談話における表現である「今回の失敗はあなたのせいだ」を指しているので、談話の直示です。
2,「その」は、現場の青いのを指しています。「場所の直示」です。
3,「あの」は、若かった当時を指していますが、妻の談話における表現や内容に、若かった当時は含まれていません。夫が勝手に過去に思い出にふけっているだけです。「あの頃」で「時間の直示」です。
4,「あれ」は、まえに食べに行ったものを指していますが、同僚の談話における表現や内容に、まえに食べに行ったものはでてきません。
よって、正解は1です。


問3 ある直示表現が別の直示表現として使われる例として不適当なものを選ぶ問題です。
1,「そこのかたどうぞ」の「そこ」は場所を指しているので「場所の直示」です。「あなたどうぞ」は人を指しているので「人称の直示」です。「次のかたどうぞ」は「次」という時間を指している? うーん。
具体的に考えてみます。例えばラーメン屋の行列における「次のかたどうぞ」の「次」とは、行列の順番のことを指しています。本来、「次」は時間的なことを指すので「時間的直示」なのですが、ラーメン屋の店員が「次の方どうぞ」と言った場合は、ラーメンの行列を指しているので、「談話的直示」になります。ということでしょうか。難しいですね。問2の選択肢のように、「談話における内容や表現」のこの部分を指していると明確にはいえないので、「談話直示」ではなく「談話直示(談話っぽい直示)」ということなんだと思います。

2,「」とは、二つのものにはさまれた、あいている部分(大辞林)ですから、「この間は」は本来「場所の直示」のはずです。しかし現在では「この間」といえば、今より少し以前の時間を指すことが多いです。本問でも「時間の直示」として使われています。

3,「あちら」は本来「場所の直示」ですが、ここでは、山田課長という人を指しているので、「人称の直示」として使われています。

4,「お前」は本来「人称の直示」です。ここでは話し相手を指しているので、「人称の直示」として使われています。

よって、正解は4です。


問4
1,日本語では、役職語が呼称表現として使用されることがあります。同じように英語、中国語、韓国・朝鮮語においても役職語が呼称表現として使用されることがあります。
(英語の例)「ドクター!」
(中国語の例)「老师!」
(韓国語・朝鮮語の例)「선생님(ソンセンニム)!」


問5 誤用の原因が直示に関わらない例を選ぶ問題です。
直示(ダイクシス)とは、意味が発話された場面に依存する言葉です。
1,「来る」という言葉は、話し手に近づくことであり、逆に話し手から遠ざかる場合は「行く」といいます。つまり、発話された場面に意味が依存しているので、直示です。「行く」とすべきを「来る」にしているので、誤用の原因が直示に関わっています。

2,「いらっしゃいますか」が正しいです。敬語の活用を間違っているので、誤用の原因が直示に関わらない例です。

3,「人称の直示」である「この方」を使うべきなので、誤用の原因が直示に関わっています。

4,「時間の直示」である「昨日」の後に「ニ格」はいらないので、誤用の原因に直示が関わっています。

よって、正解は2です。


スポンサードリンク