日本語教育能力検定試験問題の解説

日本語教師になるには過去問です。大学で日本語教育課程を専攻していない人が日本語教師になるには①日本語教師養成講座420時間コース受講か②日本語教育能力検定試験合格です。独学でも日本語教育能力検定試験に合格できます。日本語教育能力検定試験では似た問題が繰り返し出題されるので日本語教師になるには過去問に慣れることが大事です。本ブログではH23以降の日本語教育能力検定試験を分かりやすく解説しました

カテゴリ:平成28年度日本語教育能力検定試験問題の解説 > 試験Ⅰ

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題13は、【フェイス】です。

問1 
言語人類学者ブラウン&レビンソンのいう「フェイス」とは、 人間がもつ基本的欲求(basic wants)であり、他者に理解、共感されたいというポジティブ・フェイスと、他者に立ち入られたくない、邪魔されたくないというネガティブ・フェイスがある(研究社日本語教育事典176R)。

よって、正解は1です。


問2
1,談話管理理論とは、談話における諸現象を、話し手の心的操作による談話の管理という観点から説明しようとする理論(研究社日本語教育事典147L)。

2,発話行為理論とは、オースティンが提唱した発話行為(言語行為)の3分類(①発語行為②発語内行為③発語媒介行為)。詳しくは、 平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題4【発話行為】の解説をご参照ください。

3,ポライトネス理論とは、互いの「フェイス」を傷つけないように言語的配慮を行いながらコミュニケーションを行うことに関する理論。

4,アコモデーション理論とは、話す相手によって自分の話し方やスタイルが変わることを説明しようとする理論で、日本語では適応理論応化理論と呼ばれる(日本語教育能力検定試験に合格するための用語集96頁)。

以上より、正解は3です。


問3「ポジティブフェイスへの配慮」の例を選ぶ問題です。
ポジティブフェイスに配慮した発話の例、ネガティブフェイスに配慮した例は平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題11【フェイスとポライトネス】で問われています。

日本語教育能力検定試験に合格するための用語集63頁によると、
・ポジティブフェイス…他人に認められたい、よく思われたい、賞賛されたい、といった自分のフェイスを高めたいという積極的な気持ちのこと。

・ネガティブフェイス…他人にじゃまされたくない、バカにされたくない、自分の領域を守りたい、というフェイスを守るための自己防衛的な意識のこと。

1,相手を避難するときに「私が悪いのかな?」と聞くのは、控えめな表現なので、ネガティブフェイスへの配慮です。

2,相手の壊したものを「壊れちゃったかも」と言うのは、控えめな表現なので、ネガティブフェイスへの配慮です。

3,相手の髪型の変化について話題にするのは、普通の男なら気づかない些細な変化でも君のことなら何でも気づく、そう、僕ならね。だから、君も僕を受け入れてくれ、など他者に理解されたいという欲求の現れなので、ポジティブフェイスへの配慮です。

4,相手が断りやすい表現で飲み会に誘うのは、相手が断ったとしても、たまたまその日、彼女は仕事が忙しかっただけなんだ、僕が嫌われているからじゃないんだ、そもそも僕はそんな期待なんかしてなかったし、僕だって仕事が忙しいからむしろラッキーだし、など自己防衛的な意識の現れなので、ネガティブフェイスへの配慮です。

以上より、3が正解です。


問4「フェイス」への配慮よりも伝達の効率性が優先されるのは、例えば、緊急事態のときなので、3が正解です。


問5「フェイス」侵害の度合いの3つの要因に関する問題です。
研究社日本語教育事典175Rによると、
フェイスを脅かす行為(face-threatening acts, FTA)の度合いは、
①話し手と聞き手の社会的距離(social distance)
→選択肢2「話し手と聞き手の社会的距離

②聞き手の話し手に対する力(power)
→選択肢1「話し手と聞き手との力関係

③ある行為がある特定の文化で相手にかける負荷の度合い(rank of imposition)
→選択肢3「特定文化における行為の負担度
の3要素によって見積もられる。

よって、4が正解です。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題14は、【台湾での日本語教育の始まり】です。

問1 台湾が植民地となった契機を選ぶ問題です。

この問題を見たとき、
私は幸せを噛み締めました。
なんて運が良いのだろうと。

数日前、一冊の本と出会っていたからです。
日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16 
↑amazonレビューも満点5つ星。

日本史(戦国時代以降)について日本語教育の観点から書かれているのですが、中学・高校で学んだことを別の視点で眺めるのは大変興味深く、没頭しました。

アルクさん、ありがとう。
私は近代日本史をさっぱり覚えていなかったけれど、
アルクさんの『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』の28頁には、台湾での日本語教育という項目があったから、思い出すことができたよ。お礼に一部引用するよ。

日清戦争に敗れた清は下関条約で台湾を日本に割譲、台湾は日本領土となり、日本による支配は一九四五年まで続くことになります」

よって、3が正解です。

アルクさんの解答速報もすでに出ているので、念のため、確認してみましょう。

……
………
?????
私の目がついにパソコンのブルーライトにやられてしまったのでしょうか。
何度再読込しても、プリントアウトしても、まばたきしても、目薬さしても、アルクさんの解答速報が2に見えるではありませんか。

どういうことだってばよ?

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題14は、【台湾での日本語教育の始まり】です。

問2
アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』29頁によると、
「最初に総督府学務部長心得に任命されて日本語教育の体制作りを行ったのが、伊沢修二でした。」

よって、2が正解です。


問3
アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』30頁によると、
「台湾での日本語の教え方に新しい方向を見いだすために、教師たちが研究した直接法が、フランスのドイツ語教師グアンの開発した教授法です。その中心になったのは一八九七年に第二回の講習員として台湾にやってきた山口喜一郎でした。」

よって、正解は1です。


問4
 関正昭著日本語教育史研究序説133頁『2.台湾で開発された教授法と教材 3)公学校の教科書』によると、

1901年から1903年にかけて発行された台湾教科用書国民読本は、表音式仮名遣いを採用。

1913年から1914年にかけて発行された公学校用国民読本は、日本語を日本語によって教えるという直接法の徹底化にともなって台湾教科用書国民読本を大幅に改訂したもの。「内地人」用の国定読本に合わせて表記を歴史的仮名遣いに改めている。
日本語教育史研究序説
 
本問では、1912年の台湾公学校規則改正後に発行された教科書とありますので、
1の歴史的仮名遣いが正解であると思料します。


問5「国語常用家庭」で与えられた特典に関する問題です。

アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』33頁によると、
「『国語常用家庭』という制度が設けられ、子どもたちの入学進学や公務員採用の際に有利に取り計らわれました」
とのことなので、
選択肢2と3で迷いましたが、
「入学進学」の有利な取り計らいが「公学校入試の一部科目が免除」かどうかはわからないので、
3が正解であると思料しました。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題15は、【日本語指導が必要な児童生徒】です。

問1「日本語指導が必要な児童生徒」に関して、2010年から2014年の動向に関する問題です。

これは難問でした。

まずは、下記リンクの資料を御覧ください。
文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成26年度)」の結果についてに数字とグラフが載っています。

上記資料の表現を引用しますと、

「平成 26 年5月1日現在、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は 29,198 人(27,013 人)で、前回調査より 2,185 人[8.1%]増加した。」
「また、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒は 7,897 人(6,171 人)で、1,726 人[28.0%]増加した。」

ということは、3が正解だな、と思いたいのですが、
「前回調査」は2012年(平成24年)のため、問題文が聞いている2010年との比較ではないのですね。

仕方がないので、2010年(平成22年)の数字を探してみます。
上記資料の5頁図1、6頁図2にそれぞれありました。

・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人

・日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数
2010年(平成22年)…5496人


まとめますと、
・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人
2014年(平成26年)…29,198 人


・日本語指導が必要な日本国籍の児童数
2010年(平成22年)…5,496人
2014年(平成26年)…7,897人

数字としてはいずれも増加しています。

ということでやっぱり3が正解だな、
と思いたいのですが、
上記資料の5頁をみてください。図1をみてください。
図で見るとほとんど増えていません。
若干上向きの横ばいです。
見方によって、横ばいとも増加ともいえそう。
答えが一つに絞れません。

困りました。
仕方がないので、言葉の定義にまで戻ってみます。

「増加」とは、
数量が増えること」(スーパー大辞林3.0)

「横這い」とは、
「①横に這うこと。②相場・物価・売り上げ・賃金などの上下の変動の少ないこと。③カメムシ目ヨコバイ上科の昆虫の総称」(スーパー大辞林3.0)


・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
は、28,511人→29,198 人
となっているので、
「数量は増えています」

しかし表で見ると、
「上下の変動が少ない」です。

スーパー大辞林3.0の力を借りても答えが出せません。

さらなる手段です。
問題作成者の気持ちになってみます。

どうしてこんな問題を作ったのか?
どうして2012年との比較じゃなくて、2010年との比較にしたのか?

謎が解けました。
記述問題の書き方でもオススメした「問題作成者の気持ちになる」方法は、
ここでも有効でした。

「日本語指導が必要な児童生徒」
と言われれば、普通は外国人を想像します。
ところが実際は、
日本語指導が必要な外国人児童生徒はそんなに増えていないのに、
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒が明確に増えている。
これは常識と異なることなので、
問題にしたら面白いぞ。
受験生の裏をかけるし、意外な事実を学ぶことができて受験生も幸せだろう。

問題作成者は、そのように考えたに違いありません。

ところがやっかいなことに、
2012年だけ、日本語指導が必要な外国人児童生徒数が明確に減ってしまった影響で、
前回調査(2012年)との比較では、2014年の日本語指導が必要な外国人児童生徒数も明確に増えています。冒頭で確認したように。

このままでは、意外な事実の面白い問題が作れない。
そこで、問題作成者は2010年との比較を持ち出したに違いないのです。

以上の経緯を考えれば、
正解は1であると思料します。

その他の資料としては、日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の在り方等についての1−1日本語指導が必要な外国人児童生徒数の状況に、「近年、横ばい状況」という表現が出てきます(ただし平成22年度(2010年)までの数字です)。
一方、平成28年3月22日文部科学省『日本語能力が十分でない子供たちへの教育について』では、
「公立学校に在籍する外国人児童生徒の約4割が日本語指導を必要としており、増加傾向。」という表現が出てきます。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題15は、【日本語指導が必要な児童生徒】です。

問2 日本語指導が必要な児童生徒への「日本語教育」に関する問題です。
1,答えは学校教育法にあります。
学校教育法第36条
第1項 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。
第2項 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる
※中学校については、同法第49条で36条の規定を準用。

よって、義務教育段階では文部科学省検定済教科書以外の教材利用は許可されていないというのは誤りです。

2,
文部科学省の学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)によると、
「日本語指導は,複数校への巡回による指導も含め児童生徒の在学する学校において行うことを原則とするが,指導者の確保が困難である場合等は,他の学校における指導が認められること。」とありますので、日本語指導に際して外部機関の協力を得ることは認められてます。


3,
Q30 小学校の児童と中学校の生徒の双方を対象として,同時に同じ教室で「特別の教育課程」による日本語指導を行うことはできますか。によると、
「「特別の教育課程」による指導は,あくまでも当該児童生徒の正規の教育課程の一環として位置付けられるもの」とありますので、外国人児童生徒への日本語の指導は正規の教育過程には含まれていないというのは誤りです。


4,
学校教育法施行規則の一部を改正する省令等について【日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施】によると、
「年間10単位時間から280単位時間までを標準とする。」とありますように、
特定の教科の全授業時数を日本語指導にあてることは推奨されていません。

以上より、正解は4と思料します。

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