日本語教育能力検定試験問題の解説

日本語教師になるには過去問です。大学で日本語教育課程を専攻していない人が日本語教師になるには①日本語教師養成講座420時間コース受講か②日本語教育能力検定試験合格です。独学でも日本語教育能力検定試験に合格できます。日本語教育能力検定試験では似た問題が繰り返し出題されるので日本語教師になるには過去問に慣れることが大事です。本ブログではH23以降の日本語教育能力検定試験を分かりやすく解説しました

カテゴリ: 平成28年度日本語教育能力検定試験問題の解説

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題12は、【文化的価値感】です。

問1「サピア・ウォーフの仮説」に関する問題です。 
サピア・ウォーフの仮説(言語相対論)とは、ある言語とその言語の話し手である人間の思考の関係に関する仮説で、強い仮説と弱い仮説がある。
強い仮説「人間の思考は言語によって決まる」
弱い仮説「言語の違いが話者の思考や外界認識に影響を与える」(以上は、ヒューマンアカデミー著『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第3版』28頁より) 

よって、正解は3です。 


問2  日本語には単純語レベルで「コメ」「イネ」「メシ」という区別がありますが、同様の例を選ぶ問題です。

単純語とは、 単語のうち、意味・語形の上からそれ以上に分けることができないと考えられるもの(スーパー大辞林3.0)。

複合語(合成語、熟語)とは、単語のうち、意味・語形の上から二つ以上の単語の結合によってできたと認められる語。「朝日」「買い物」「花見」「祝い酒」「書き込む」の類(スーパー大辞林3.0)。

派生語とは、単語のうち、ある単語に接辞などが付いたりしてできた語。

1,「雲」の名称には形状に応じた語彙はありますが、複合語です。
例)積乱雲

2,「牛」の名称には家畜としての用途に応じた語彙がありますが、複合語です。
例)乳牛

3,「魚」の名称には成長過程に応じた語彙があり、単純語です。
例)ハマチ→ブリ

4,「火」の名称には用途に応じた語彙がありますが、複合語です。
例) 焚き火

以上より、3が正解です。


問3 すべての親族名称が単純語レベルで同じ区別を持つとは限りません。英語と日本語で区別の仕方が異なる親族名称……といえば、ブラザー、シスター、が思い浮かびます。
よって、ブラザーの4が正解です。


問4 日本語の慣用句で用いられる色彩語に関する問題です。
1,「黒い」は悪いことを意味する→腹黒い

2,「赤い」は明るい前途を意味する→?

3,「青い」は未熟なさまを意味する→青二才

4,「灰色」は暗い様子を意味する→灰色の空、灰色の海

よって、2が正解です。


問5 忌み言葉と呼ばれ、別の表現に言い換えられることもある例を選ぶ問題です。
スーパー大辞林3.0によると、
忌み言葉とは、①…信仰上の理由や、特定の職業・場面で使用を避ける言葉。不吉な意味の語を連想させる言葉が多い。例えば婚礼の際の「去る」「切る」「帰る」「戻る」「別れる」、お悔やみの際の「重ねる」「重ね重ね」「返す返す」「再び」など。
②…①の代わりに使う言葉。結婚式で「終わる」を「お開きにする」という類。 

以上より、 正解は3です。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題13は、【フェイス】です。

問1 
言語人類学者ブラウン&レビンソンのいう「フェイス」とは、 人間がもつ基本的欲求(basic wants)であり、他者に理解、共感されたいというポジティブ・フェイスと、他者に立ち入られたくない、邪魔されたくないというネガティブ・フェイスがある(研究社日本語教育事典176R)。

よって、正解は1です。


問2
1,談話管理理論とは、談話における諸現象を、話し手の心的操作による談話の管理という観点から説明しようとする理論(研究社日本語教育事典147L)。

2,発話行為理論とは、オースティンが提唱した発話行為(言語行為)の3分類(①発語行為②発語内行為③発語媒介行為)。詳しくは、 平成24年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題4【発話行為】の解説をご参照ください。

3,ポライトネス理論とは、互いの「フェイス」を傷つけないように言語的配慮を行いながらコミュニケーションを行うことに関する理論。

4,アコモデーション理論とは、話す相手によって自分の話し方やスタイルが変わることを説明しようとする理論で、日本語では適応理論応化理論と呼ばれる(日本語教育能力検定試験に合格するための用語集96頁)。

以上より、正解は3です。


問3「ポジティブフェイスへの配慮」の例を選ぶ問題です。
ポジティブフェイスに配慮した発話の例、ネガティブフェイスに配慮した例は平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題11【フェイスとポライトネス】で問われています。

日本語教育能力検定試験に合格するための用語集63頁によると、
・ポジティブフェイス…他人に認められたい、よく思われたい、賞賛されたい、といった自分のフェイスを高めたいという積極的な気持ちのこと。

・ネガティブフェイス…他人にじゃまされたくない、バカにされたくない、自分の領域を守りたい、というフェイスを守るための自己防衛的な意識のこと。

1,相手を避難するときに「私が悪いのかな?」と聞くのは、控えめな表現なので、ネガティブフェイスへの配慮です。

2,相手の壊したものを「壊れちゃったかも」と言うのは、控えめな表現なので、ネガティブフェイスへの配慮です。

3,相手の髪型の変化について話題にするのは、普通の男なら気づかない些細な変化でも君のことなら何でも気づく、そう、僕ならね。だから、君も僕を受け入れてくれ、など他者に理解されたいという欲求の現れなので、ポジティブフェイスへの配慮です。

4,相手が断りやすい表現で飲み会に誘うのは、相手が断ったとしても、たまたまその日、彼女は仕事が忙しかっただけなんだ、僕が嫌われているからじゃないんだ、そもそも僕はそんな期待なんかしてなかったし、僕だって仕事が忙しいからむしろラッキーだし、など自己防衛的な意識の現れなので、ネガティブフェイスへの配慮です。

以上より、3が正解です。


問4「フェイス」への配慮よりも伝達の効率性が優先されるのは、例えば、緊急事態のときなので、3が正解です。


問5「フェイス」侵害の度合いの3つの要因に関する問題です。
研究社日本語教育事典175Rによると、
フェイスを脅かす行為(face-threatening acts, FTA)の度合いは、
①話し手と聞き手の社会的距離(social distance)
→選択肢2「話し手と聞き手の社会的距離

②聞き手の話し手に対する力(power)
→選択肢1「話し手と聞き手との力関係

③ある行為がある特定の文化で相手にかける負荷の度合い(rank of imposition)
→選択肢3「特定文化における行為の負担度
の3要素によって見積もられる。

よって、4が正解です。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題14は、【台湾での日本語教育の始まり】です。

問1 台湾が植民地となった契機を選ぶ問題です。

この問題を見たとき、
私は幸せを噛み締めました。
なんて運が良いのだろうと。

数日前、一冊の本と出会っていたからです。
日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16 
↑amazonレビューも満点5つ星。

日本史(戦国時代以降)について日本語教育の観点から書かれているのですが、中学・高校で学んだことを別の視点で眺めるのは大変興味深く、没頭しました。

アルクさん、ありがとう。
私は近代日本史をさっぱり覚えていなかったけれど、
アルクさんの『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』の28頁には、台湾での日本語教育という項目があったから、思い出すことができたよ。お礼に一部引用するよ。

日清戦争に敗れた清は下関条約で台湾を日本に割譲、台湾は日本領土となり、日本による支配は一九四五年まで続くことになります」

よって、3が正解です。

アルクさんの解答速報もすでに出ているので、念のため、確認してみましょう。

……
………
?????
私の目がついにパソコンのブルーライトにやられてしまったのでしょうか。
何度再読込しても、プリントアウトしても、まばたきしても、目薬さしても、アルクさんの解答速報が2に見えるではありませんか。

どういうことだってばよ?

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題14は、【台湾での日本語教育の始まり】です。

問2
アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』29頁によると、
「最初に総督府学務部長心得に任命されて日本語教育の体制作りを行ったのが、伊沢修二でした。」

よって、2が正解です。


問3
アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』30頁によると、
「台湾での日本語の教え方に新しい方向を見いだすために、教師たちが研究した直接法が、フランスのドイツ語教師グアンの開発した教授法です。その中心になったのは一八九七年に第二回の講習員として台湾にやってきた山口喜一郎でした。」

よって、正解は1です。


問4
 関正昭著日本語教育史研究序説133頁『2.台湾で開発された教授法と教材 3)公学校の教科書』によると、

1901年から1903年にかけて発行された台湾教科用書国民読本は、表音式仮名遣いを採用。

1913年から1914年にかけて発行された公学校用国民読本は、日本語を日本語によって教えるという直接法の徹底化にともなって台湾教科用書国民読本を大幅に改訂したもの。「内地人」用の国定読本に合わせて表記を歴史的仮名遣いに改めている。
日本語教育史研究序説
 
本問では、1912年の台湾公学校規則改正後に発行された教科書とありますので、
1の歴史的仮名遣いが正解であると思料します。


問5「国語常用家庭」で与えられた特典に関する問題です。

アルク『日本語教育能力検定試験に合格するための世界と日本16』33頁によると、
「『国語常用家庭』という制度が設けられ、子どもたちの入学進学や公務員採用の際に有利に取り計らわれました」
とのことなので、
選択肢2と3で迷いましたが、
「入学進学」の有利な取り計らいが「公学校入試の一部科目が免除」かどうかはわからないので、
3が正解であると思料しました。

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平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題15は、【日本語指導が必要な児童生徒】です。

問1「日本語指導が必要な児童生徒」に関して、2010年から2014年の動向に関する問題です。

これは難問でした。

まずは、下記リンクの資料を御覧ください。
文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成26年度)」の結果についてに数字とグラフが載っています。

上記資料の表現を引用しますと、

「平成 26 年5月1日現在、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は 29,198 人(27,013 人)で、前回調査より 2,185 人[8.1%]増加した。」
「また、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒は 7,897 人(6,171 人)で、1,726 人[28.0%]増加した。」

ということは、3が正解だな、と思いたいのですが、
「前回調査」は2012年(平成24年)のため、問題文が聞いている2010年との比較ではないのですね。

仕方がないので、2010年(平成22年)の数字を探してみます。
上記資料の5頁図1、6頁図2にそれぞれありました。

・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人

・日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数
2010年(平成22年)…5496人


まとめますと、
・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人
2014年(平成26年)…29,198 人


・日本語指導が必要な日本国籍の児童数
2010年(平成22年)…5,496人
2014年(平成26年)…7,897人

数字としてはいずれも増加しています。

ということでやっぱり3が正解だな、
と思いたいのですが、
上記資料の5頁をみてください。図1をみてください。
図で見るとほとんど増えていません。
若干上向きの横ばいです。
見方によって、横ばいとも増加ともいえそう。
答えが一つに絞れません。

困りました。
仕方がないので、言葉の定義にまで戻ってみます。

「増加」とは、
数量が増えること」(スーパー大辞林3.0)

「横這い」とは、
「①横に這うこと。②相場・物価・売り上げ・賃金などの上下の変動の少ないこと。③カメムシ目ヨコバイ上科の昆虫の総称」(スーパー大辞林3.0)


・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
は、28,511人→29,198 人
となっているので、
「数量は増えています」

しかし表で見ると、
「上下の変動が少ない」です。

スーパー大辞林3.0の力を借りても答えが出せません。

さらなる手段です。
問題作成者の気持ちになってみます。

どうしてこんな問題を作ったのか?
どうして2012年との比較じゃなくて、2010年との比較にしたのか?

謎が解けました。
記述問題の書き方でもオススメした「問題作成者の気持ちになる」方法は、
ここでも有効でした。

「日本語指導が必要な児童生徒」
と言われれば、普通は外国人を想像します。
ところが実際は、
日本語指導が必要な外国人児童生徒はそんなに増えていないのに、
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒が明確に増えている。
これは常識と異なることなので、
問題にしたら面白いぞ。
受験生の裏をかけるし、意外な事実を学ぶことができて受験生も幸せだろう。

問題作成者は、そのように考えたに違いありません。

ところがやっかいなことに、
2012年だけ、日本語指導が必要な外国人児童生徒数が明確に減ってしまった影響で、
前回調査(2012年)との比較では、2014年の日本語指導が必要な外国人児童生徒数も明確に増えています。冒頭で確認したように。

このままでは、意外な事実の面白い問題が作れない。
そこで、問題作成者は2010年との比較を持ち出したに違いないのです。

以上の経緯を考えれば、
正解は1であると思料します。

その他の資料としては、日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の在り方等についての1−1日本語指導が必要な外国人児童生徒数の状況に、「近年、横ばい状況」という表現が出てきます(ただし平成22年度(2010年)までの数字です)。
一方、平成28年3月22日文部科学省『日本語能力が十分でない子供たちへの教育について』では、
「公立学校に在籍する外国人児童生徒の約4割が日本語指導を必要としており、増加傾向。」という表現が出てきます。

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