お待たせしました。

日本語教育能力検定試験Ⅲ 記述問題の書き方その5は【抽象論・一般論に加え、具体論・個別論も書く】です。

夜も遅いですから、今回はさっそく平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題17(記述問題)を使って、具体的に説明したいと思います。

前回までに書いた答案は以下のとおりです。

『私は今後もこのクラスでの活動にディベートを取り入れたい。論理的思考能力を高めるにはディベートが必要だと考えるからだ。
 確かに、自分の考えとは違う立場で意見を述べるのは、精神的に苦痛かもしれない。普段とは異なった視点で物事を考えなければならないからだ。』

このあと何を書きましょうか?

自説→その理由→反対説→その根拠→?

ときたら……


もちろん。
反対説の根拠を叩くのです。
反対説(の根拠)を潰すことで、自説が補強できます。

お好きなように反対説を鞭打ってください!
私は以下のとおり書きました。

『私は今後もこのクラスでの活動にディベートを取り入れたい。論理的思考能力を高めるにはディベートが必要だと考えるからだ。
 確かに、自分の考えとは違う立場で意見を述べるのは、精神的に苦痛かもしれない。普段とは異なった視点で物事を考えなければならないからだ。
 しかし、それこそがディベートの目的である。自分と違う意見を述べるには、まず自分を理屈で納得させなければならないので、いつもと違う視点で深く考えなければならない。すると、物事を多角的に見る力が身につき、論理的思考能力も高まるのである(←メインの問いに対する答えを論じながら、サブの問いに対する答えも補強しています)。日本語クラスにいるであろう他文化の人間との交流にも役立つはずだ。』

いけない。
記述問題対策を説明していたのを忘れて、最後まで書いてしまうところでした。
とりあえずここまでにいたします。
読み返して思ったのですが、無駄に字数を使いすぎていますね。
「普段とは異なった視点で物事を考えなければならない」
「いつもと違う視点で深く考えなければならない」
このあたりが重複しています。
完璧を求めるならばどちらかを削除して、論旨をスッキリさせたいところですが、
記述問題で大事な考え方の一つは、
完璧な答案を書こうとは思わないこと
なので、これでよしとします。

完璧な答案を書こうとすると、書けなくなってしまう・時間が足りなくなってしまうことが多いので、記述対策前三条で基礎を固めたあとは自由に書くことが大事なんですね。
多くの人が不十分な基礎固めさえしっかりできていれば、高得点は狙えます。
と言っても指針は必要だ。
そんなわけで、第5条の登場です。

【抽象論・一般論に加え、具体論・個別論も書く】

上記の答案を見てみると、抽象論・一般論・理想論が多いですね。
論理的思考能力が高まるだの、多角的な視点だの。
もちろん、抽象論・一般論も大事なんです。
しかし、それに加え、具体論・個別論という異なった視点から自説を補強することで、さらに説得力が増すんですね。
ここでも多角的な視点が大事なんです。

何も考えずに書いていると、抽象的なことばかり書くか、具体的なことばかり書くか、どちらかになりがちなので、第5条があります。

本問のように問題文が長い場合、自説を補強するための抽象論か具体論、いずれかのキーワードが問題文に紛れ込んでいることが多いのですが、この問題では前者です。

自説は、「ディベートを取り入れる」ということですが、
その抽象的(一般的)理由付け「論理的思考能力を高める」という文が問題文にありました。
問題文の言葉をなるべく使っていった結果、抽象論に偏っていました。
なので最後は具体論を書いて、バランス良く締めたいと思います。
ちなみに、さきほど書いた最後の一文は、ちょっと具体的ですね。

日本語クラスにいるであろう他文化の人間との交流にも役立つはずだ。』

ここでも問題文の言葉(太字部分)をさりげなく使って、問題文をしっかり読んでいることを採点者にアピールしました。
ただし、問われていることとは離れているので、字数が足りなければ削除すべき部分です。

さて、
最後の段落を書くにあたって、
一つの指針は具体的に書くことですが、
実はもう一つ、書くべきポイントがあります。
それは何でしょうか。
お考えの上、続きをお読みください。









もう一つのポイントは、反対意見への配慮です。

私の書いた答案を読んでみると、 
反対説に配慮したと言っておきながら、結局それを自説の理由付けに使っているだけで、
譲歩は一切していないのですね。
記述問題によってはそれでいいのですが、
本問の場合、反対説は学習者から出ています。
学習者の意見を、滅多打ちにして、ハイ終わり。
は、教師としてどうなんでしょうか?
よろしくはなさそうです。

だから、ここでは譲歩して、
学習者の意見に耳を傾けることのできる、心の広い教師であることを、採点者にアピールしたいと思います。

しかも抽象論ばかり書いていたので、具体的に譲歩する必要があります。

それでは、具体的な譲歩を書いてみます。

『もちろん、学習者の申し入れに対する配慮も考えたい。例えば、最初の授業では自分と同じ立場で立論させる。そのかわり、次の授業では反対の立場に立たせる。「自分で自分の意見を論破できるかな?」というのは面白そうで受け入れられやすいのではないか。』

どうでしょうか。
一気に具体的になりましたね。

このように抽象論と具体論、両方の視点から論じることで、解答に厚みが生まれます

最後に解答をまとめます。

『私は今後もこのクラスでの活動にディベートを取り入れたい。論理的思考能力を高めるにはディベートが必要だと考えるからだ。
 確かに、自分の考えとは違う立場で意見を述べるのは、精神的に苦痛かもしれない。普段とは異なった視点で物事を考えなければならないからだ。
 しかし、それこそがディベートの目的である。自分と違う意見を述べるには、まず自分を理屈で納得させなければならないので、いつもと違う視点から深く考えなければならない。すると、物事を多角的に見る力が身につき、論理的思考能力も高まるのである。日本語クラスにいるであろう他文化の人間との交流にも役立つはずだ。
 もちろん、学習者の申し入れに対する配慮も考えたい。例えば、最初の授業では自分と同じ立場で立論させる。そのかわり、次の授業では反対の立場に立たせる。「自分で自分の意見を論破できるかな?」というのは面白そうで受け入れられやすいのではないか。』

記述問題に対する解答は以上のとおりですが、次回は、第6条 【問題作成者・採点者の気持ちになる】を説明し、記述問題に対する心得をお伝えしたいと思います。 

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